「ああ、僕は一生エロ本を買うことなどないのだろうなぁ」
コンビニや本屋の成人誌コーナーをちらりと見るたびに、当時非常にピュアな男子高校生であった私は思っていたのでした。
なにぶん生まれたときから臆病な性分です。
成人誌コーナーの前にたたずむだけで、「アイツはエロ野郎よ」「ドスケベ!」「ムッツリー!フゥー!」などと同級生の女子から陰で嘲笑されるのではないかと恐れて、エロ本に近づきすらできない始末。
エロ本を立ち読みするオッサンを発見しては、「な、なんて勇気のある人なんだ!この人ならばエクスカリバーも抜けるかも!」とまで高評価を与えていました。
そんなピュアだった私も、今では真っ昼間からエロ本を買いに行くようになりました。
それは、古本屋という革新的なエロ本売り場を発見したからなのです。
元々はエロ本を求めるために古本屋のアダルトコーナーを訪れたわけではなく、そこに同人ゲームや昔見ていた一般向けパソコン雑誌が置かれていたからなのですが、ある日そこで欲しい同人ゲームを見つけて買おうとする時に気付いたのです。
あるチェーン店の古本屋のアダルトコーナーのレジは、店員から顔が見えなくなっているということに!
ということは、私が100冊エロ本を買おうが、店員的には「どなたか存じませんので貴方が度の超えた金持ちドエロ野郎であること以外は分かりません」ですむのです。
また、アダルトコーナーにはのれんがあり、入る前こそ潜入工作員のようなスニーキングテクニックが求められるものの、一旦そこに入ってしまえばエロ本を物色しているということも、同じエロ本を物色している者以外には分かりません。
そしてエロ本の物色は非常にデリケートな行為。エロ本を探し求める者の間では、暗黙の了解という形で不可侵条約が結ばれています。
これはもしや、好き放題エロ本を物色できるのでは!?そして買いまくれるのでは!?
私はそれはもう新天地を見つけた冒険者状態でテンションがあがっていきました。
ちなみに古本屋ではありますが、アダルトコーナーには普通に新刊本も置かれています。エロ本という偉大な存在の前には古本屋という建前も揺らいでしまうものなのでしょうか。
しかし、エロ本買い放題だと分かっていても、私は臆病者です。
エロ本を探し求める者の間で不可侵条約が結ばれていたとしても、パパンとママンというエロ本ユーザにとっての最大の敵の存在は解消されません。
たまに自家用車の掃除をするとパパンが車内に隠しているエロ本を発見してしまい気まずくなったりするので、別にエロ本の存在自体が我が家で禁じられているわけではありませんが、「エロ本を買った」という事実は出来るだけ悟られないようにしなければなりません。
というわけで、エロ本を買いに出かけるのは真っ昼間のみということに決めました。真夜中に買いに行くのは生々しすぎます。
また、「エロ本が買えない買えない」と悶々としている間に、残念なことに私自身の性的嗜好がねじ曲がってしまったため、本来であればエロ本自体も隠し場所を考えなければなりませんが、元々我が家には漫画本が100冊以上あるのでその中に紛れ込ませばOKでしょう。OKと言ったらOKなのです。
そうして我が家に築き始めたエロ本パラダイス。しかしとある瞬間、私はふと気付いてしまったのです。
「あれ!?この古本屋って昼間は客が少ないから、結果的にエロ本買ったの俺ってバレてね!?」
大問題勃発です。
昼間の古本屋は不思議と客が少ないため、客が自分一人だけというケースも多々あります。
そうした状況で顔をかくしてエロ本を買ったところで、古本屋の出入り口を見るだけで店員からはこの卑しいドエロ野郎の姿が丸わかりです。
というか冷静に考えれば、体型とか服の柄とかでも客が少なければ特定は出来ますし、エロ本はうっかり表紙が他の客から見えないよう紙袋で包装されるため、分かる人には「あいつはさっきエロ本を買ったのだな」ということが分かってしまいます。
しかし、一旦は築きかけたパラダイス。自分好みのエロ本で本棚を埋めるというエロ本ドリームは(主に本能的に)止めることが出来ません。
ドエロ野郎であることがバレることはこの際仕方が無いことにします。そもそもエロ本売ってる店がドエロ野郎なんだ。そこの店員もドエロ野郎に違いない。ドエロ野郎めコンチクショウ。
しかし、それであっても性的嗜好がひねくれていることだけは店員に知られたくないのです。
ドエロ野郎な上に変態となると、うっかりその店員とコンビニで鉢合わせした時に「ゲエッ!」という顔をされかねません。そんな顔されたら私の胃腸がストレスで爆散して死んでしまう。
そこで私は知恵を絞りました。
座右の銘は温故知新!先人の知恵を借りれば、この場だってしのぎきれるはず!
普通の本屋でエロ本を買う際は、一般的に
一般誌>エロ本<一般誌
といったように、一般誌でエロ本を挟む「サンドイッチ戦法」が用いられるそうです。
非常に素晴らしい先人の知恵ですが、ここは古本屋のエロ本コーナーです。四面楚歌ならぬ四面エロ本。エロ本しかありません。ある意味ハーレムと言えますが非常にまずい状況です。
自分の性的嗜好がねじまがってしまったことを隠すには、マイルドなもので挟み込むしかない。
そしてマイルドなエロ本といえば、ノーマルな純愛もの!
つまり
純愛>アヘ顔ダブルピース<純愛
純愛LOVEでアヘ顔ダブルピースを挟み込む!これこそが私が生み出した「変態サンドイッチ戦法」です!
温故知新オブザイヤーを獲得できるのではないか、と思えるほど自慢のアイディア!
この戦法では店員に「3冊もエロ本を買うなんて、この人はさぞかしドエロ人間なのだろう」と思われてはしまいますが、アヘ顔ダブルピース好き発覚だけは回避できます。
「普通に純愛ものがすきなんですけど〜、たまにはちょっと変わり種が欲しいと思って〜、アヘ顔ダブルピース買っちゃったんですぅ〜」と言うオーラを、レジに差し出すときに腰をくねくねさせながら発せばさらにパーフェクト。
なんてことを考えながら本日真っ昼間からエロ本を購入したところ、エロ本購入後に通常行う「店内を一周歩き回って退店するタイミングをずらす」という心理テクニックの実践を忘れ、いやらしくニヤけながらそそくさと古本屋を退店してしまいました。
しかもそういう時に限って、アダルトコーナーから出てきた僕の姿を目撃している他の一般客がいたし。消えてしまいたいよもう。
あ、そうそう。エロ本探しで様々な古本屋のアダルトコーナー巡りをしていたところ、高校の時の部活の先輩と数年ぶりの再会を果たすという奇跡が起こりました。
例によってお互い気まずい雰囲気になりましたが、顔だけしか覚えていない命の恩人を探している方などはエロ本コーナーに通い詰めてみると、まさかの奇跡が起こるかもしれませんよ……?(どういうオチだ)
あと、アヘ顔ダブルピースはもののたとえであり、実際の僕の性的嗜好ではありませんのであしからず。あー、淫らな触手になりてぇー。

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